2014年10月28日火曜日

DCF法を用いた株式評価法~4.修正フリーキャッシュフローの算出

今回は修正フリーキャッシュフローの算出について説明します。前回はDCF法を用いた株式評価法~3.財産価値について - バフェット流バリュー株投資で資産形成+です。


いよいよ事業価値の部分を算出していきます。その第一段階としてまず前年度の修正フリーキャッシュフロー(修正FCF)を算出します。(以下、キャッシュフロー=CF、フリーキャッシュフロー=FCFと略します。)


FCFとは

FCFとは企業本来の営業活動により獲得したお金(営業CF)から、現事業維持のために投資にまわしたお金(投資CF)を差し引いたものです。

CF計算書は、損益計算書とは異なり、実際のお金の流れを示しています。したがって、会計上ごまかしづらく、近年重要性が増してきています。

FCFとは平たく言うと、事業により得られたオーナーが自由に使えるお金です。オーナーはこのお金を事業に再投資するなどして、企業を成長させていくことができます。つまりFCFとは企業のエンジンそのものであり、これを稼ぐ力こそが企業の成長力といってもいいと思います。


修正FCFの算出

それでは実際にブロンコビリー(3091)のH25年12月期決算短信を例題として修正FCFを算出していきます。

この決算短信ではCF計算書はP15~P16に載っています。P16は財務活動によるCFで今回は使用しないので、P15を以下に示します。



上が営業CF、下が投資CFを示していて、H25年の営業CFは1641百万円としっかりとプラスになっています。ちなみにここがマイナスの企業は本業でお金を稼げない可能性がありますので、特別の注意を払う必要があります。

一方、投資CFは△875百万円となっています。前年度は△600百万円となっており、毎年一定の投資が必要であることが分かります。

教科書的な定義では

FCF = 営業CF + 投資CF

なので、

FCF = 1641-875 = 766百万円

となります。


しかし、私はこれに以下の二つの補正を加えて修正FCFとしています。

1.営業CFにおいて、一時的に急増減がありえるが、事業の能力に関係のない項目(たな卸資産、売上債権、前払い費用、仕入債務、未払い金などの流動資産、流動負債関連)は補正する。

2.投資CFは各期のバラツキが大きいため減価償却費に置き換える。

結局のところ、CF計算書は本来のお金の流れを示してくれる反面、倉庫を拡張したので一時的に在庫を増やしたとか、来年に投資する予定だったが思ったより良い案件が見つかったので今期に前倒しして投資した等、事業の本来の実力と関係のない事象をマイナス評価してしまう可能性があります(もちろん、その逆もあります)。また投資CFについては既存の設備を維持するための投資と事業で得られた余剰金を再投資した結果としての投資が一緒くたになっていて、オーナー利益を算出する際にどこで線引きするかが難しいという側面があります。

そのため、それらの事象を補正し、評価の平滑化を行う必要があると考え、上のよう処理を行うことにしました。

投資CF=減価償却費という考え方は「バフェット投資の真髄」のP116にチラッとでてきます。正確ではないですが、概算値としてはあたらずとも遠からずと思います。

この二つの補正をおこなったものは厳密にはFCFではありませんが、事業がキャッシュを稼ぐ力をある程度の精度で提示してくれます。

では上の2点を補正して修正FCFを求めてみます。

修正営業CF = 1,641 -48 +15 - 79 -79 = 1,450 百万円 (簡単のため一千万未満は非考慮)

修正FCF = 1,450 - 424 = 1,026 百万円

となります。これが前年度の修正FCFです。




DCF法を用いた株式評価法~1.はじめに
DCF法を用いた株式評価法~2.概要
DCF法を用いた株式評価法~3.財産価値について
DCF法を用いた株式評価法~4.修正フリーキャッシュフローの算出
DCF法を用いた株式評価法~5.事業価値の算出
DCF法を用いた株式評価法~6.適正価格の算出
DCF法を用いた株式評価法~7.四半期決算での修正
DCF法を用いた株式評価法~8.11年目以降の事業価値について



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5 件のコメント:

  1. 参考になります。
    MNTさんはブロンコビリーの増資後に再度、DCF法で計算されていましたが、

    決算短信(通期)のものではなく、
    3Q時点での営業CF、投資CFの数字で計算されたのでしょうか、
    もしくは通期の決算短信の数字を予想された数字を用いたのでしょうか?

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    1. 実はFCFの計算は通期決算が出た時にしかしません。ですから一年一度ということになります。
      四半期の決算では純資産と将来(主に今期)の増益率、発行済株式数を見直します。
      ブロンコビリーの増資でいうと、もともとPBRが2.0くらいありますので、増加する株式数が時価に近い資本を調達できると、結果として、一株当たりの純資産は増えることになります。
      これを評価出来たのはDCF法の利点だと今回思いました。
      単純にPERでは増加発行株式数分評価が下がりますからね。

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  2. ありがとうございます。

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  3. たびたびすみません。

    適正価格 = ( 財産価値 + 事業価値 ) / 発行済株式数

    というMNTさんの算出方法ですが
    財産価値は 20143Qの純資産である10,309 (百万円)
    事業価値は ブログにあった修正FCF = 1450 - 424 = 1026 百万円

    この数字を当てはめると
    (10309百万 + 1026百万 ) ÷ 7,430,000株 = 1525円
    となります。

    依然仰っておられました修正フリーキャッシュフロー10年分を現在価値に割り戻した部分はどのような計算をされておられますか?
    もしお時間があれば教えて頂ければ幸いです。

    >ざっくり言うと、財産価値は純資産、事業価値は修正フリーキャッシュフ>ロー10年分を現在価値に割り戻したものとしており、その和を発行株>式数で割り算しています

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    1. ぴよたんさん

      こんにちは
      そのあたりを次のエントリーで書きたいと思っていますので、もうしばらくお待ちください。

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